ロス・アンヘレスの歩み
2008年、コーヒーマーケットの低迷により生活の厳しさに直面していたリカルド氏は、「生産者自らが付加価値を生み、直接届けるコーヒーをつくりたい」という想いから、マイクロミル〈Los Angeles〉を設立しました。これがロス・アンヘレスの始まりです。
当初は、家族や親戚と資金を出し合いながら、ミルの設計や品質向上のための研究、農園の改良に奔走する日々が続きました。そして3年目の2011年、ついにCup of Excellenceで優勝。努力が形となった瞬間でした。
その後もロス・アンヘレスは品質の向上と安定、新たな農地や品種への挑戦を重ね、2013年には標高約2,000mに位置する〈ドン・カイート農園〉を取得します。購入当時、この土地はコーヒー栽培には不向きとされ、前所有者のエディ・ファジャス氏(ファラミ農園)も手を焼いていた場所でした。
ロス・アンヘレスが込めた想い ― ドン・カイート農園
ドン・カイート農園の土地には、アボカドやバナナの木が生い茂り、わずかにカトゥアイの木が植えられているだけでした。
しかしリカルド氏は、この地特有の大きな寒暖差と山風が生み出す環境に、素晴らしいコーヒーの可能性を見出します。ロス・アンヘレスの象徴となる最高品質のコーヒーを生み出す農園にするため、整地と再設計を進めました。
ビジャロボス、ケニア、ティピカ・メホラード、ゲイシャといった高付加価値品種の栽培を開始し、2017年には〈ドン・カイート ゲイシャ〉がCup of Excellenceで3位に入賞。さらに翌2018年、同農園のゲイシャが見事1位を獲得します。
困窮から抜け出すために始めたエキゾチックバラエティの挑戦は、ロス・アンヘレスの精神そのものとなり、ドン・カイート農園はブランドを象徴する存在へと成長しました。
ティピカ・メホラードについて
「ティピカ・メホラード(Typica Mejorado)」は、正式な学術分類ではありませんが、その名の通り“改良されたティピカ”として知られています。
2010年代初頭、カルデロン氏は当時ゲイシャとして流通していた苗を入手しましたが、育成の過程でそれが実際にはティピカ種であることが判明しました。
とはいえ、この木はティピカ種よりも収量が良く(もちろんゲイシャよりも)、2015/16クロップで初収穫を迎え、「メホラード(改良)」と名付けられました。
風味はジャスミンを思わせる華やかな香りを持ちつつ、しっかりとしたボディ感が特徴。初期は標高1,800〜1,900mの〈ルベン農園〉で栽培され、その後〈ドン・カイート農園〉でも生産が開始されました。現在では、ティピカ・メホラードのポテンシャルを最大限に発揮する代表的な産地の一つとなっています。