農園の再生と伝統品種
ディビナ・プロヴィデンシア農園は、ロベルト氏が2002年に購入した農園です。当時、彼は4代目として別の農園を経営していましたが、パロ・デ・コンパーニャ地区の豊かな環境に魅了され、この地で新たな挑戦を始めました。農園は標高1820mにまで達する傾斜地に広がり、もともとは1875年ごろ植民地時代に開かれた歴史ある農地でした。しかし長い年月の中で放棄されていたため、ロベルト氏はその再生から取り組み、十数年をかけて少しずつ拡大。現在では約70ヘクタールの農園として蘇っています。
この地域で育まれてきたコーヒーは、レッドブルボン、ケニアSL28、少量のオレンジブルボンです。特にケニア種は、20世紀初頭に近隣の生産者がアフリカから持ち帰ったものが起源とされ、その後パロ・デ・コンパーニャを中心に広まりました。こうした伝統品種が守られてきたことこそが、同農園のコーヒーが他の生産地や山脈とは異なる個性を持つ理由のひとつです。
パロ・デ・コンパーニャ地区
パロ・デ・コンパーニャ地区は、サンタアナ火山とイサルコ火山の恵みを受けた国内有数の肥沃な火山性土壌を有します。特にミネラルや有機微生物に富んだ砂質土壌が特徴で、農園の持続可能性を高めています。ここには樹齢100年以上の古木も現存しており、土地の歴史を物語ります。
この地では、生産性よりも個性を重視した品種を丹念に育てることにこだわっています。特有の土壌環境と、収穫期の平均気温20〜23℃という冷涼な微気候が、品種本来のポテンシャルを存分に引き出し、唯一無二の風味を生み出しています。
品質へのアプローチ
冷涼な気候の影響を受け、この地の収穫期は1月から4月と遅めに訪れます。時間をかけて熟度を増したチェリーは、濃密な風味を実現します。ゲイシャは2019年から少しずつ植樹され、2023年に初収穫を迎え、現在ようやく安定した生産に至っています。
ウォッシュドプロセスでは、収穫後にフローターを除去し、完熟チェリーを果肉除去。24〜36時間の発酵を経て水洗し、アフリカンベッドで乾燥させます。ベッドは一日の半分が日陰になるように設置され、冷涼な気候も相まって15〜22日をかけて水分値11%までスロードライング。30分ごとの攪拌や、ビニールハウス付きと屋根なしのベッドを使い分け、豆の状態に応じたきめ細やかな管理が行われています。
ロベルト氏は農芸化学と動物科学を専攻した農業技術者でもあり、有機化学や土壌管理に精通しています。農地のリノベーション、肥料の選定、植樹計画まで、年間を通した栽培計画を自ら手掛けることが農園のアイデンティティとなっています。農園にはインガの木やクスノキを植え、日陰や防風林を形成。森林環境と共生しながら、彼は「これは仕事ではなく生業だ」と語ります。
栄誉と現在
ディビナ・プロヴィデンシア農園は2007年、初めてCup of Excellenceで11位を受賞。その後10回以上受賞を重ね、常連農園のひとつとなりました。2020年にはパカマラ種のアナエロビックロットで念願の1位を獲得。長年の試行錯誤や投資、努力が実を結ぶ瞬間となりました。
ロベルト氏とその農園の献身的な取り組みは、今も世界中のコーヒー愛好家を魅了し続けています。