早すぎたマイクロミルの挑戦
ロマ・ラ・グロリア農園は、現農園主アニー・ルスさんの父、ロベルトさんが1990年代後半に創業した農園です。その名前は、ロベルトさんの祖父がかつて経営していた農園「栄光の丘(Loma La Gloria)」から受け継がれました。
創業後、土木技師としての経験を活かしたロベルトさんは、2001年に自らのコーヒーを加工するためのマイクロミルを建設。しかし、当時の中米ではまだマイクロミルの概念が広まっておらず、小規模ミルが独自に流通網を築くことは困難でした。その結果、ロベルトさんは地元の大規模ミルにコーヒーを出荷せざるを得ず、建設したミルは眠ったままとなりました。
スペシャルティコーヒーとの出会い
風向きが変わったのは2012年、娘のアニーさんが農園に加わったときでした。彼女はそれまでマーケティングの仕事に携わっており、コーヒー生産の経験は全くありませんでした。しかし、自身の得意分野を活かし、「現在のコーヒーマーケットが求めるものは何か」を徹底的に分析。その結果、スペシャルティコーヒーの思想を取り入れ、品質向上と多様なプロセスの導入を進めました。こうして、ロベルトさんが建設したミルが再稼働し、自らの手でコーヒーの生産処理を行うようになったのです。
農園の取り組みはプロセスだけに留まりません。サンサルバドル火山近郊に位置するロマ・ラ・グロリア農園は、砂質土壌に適応するため、雨水を溜める堀を整備して保水性を高めています。また、シェードツリーには多様な鳥類が生息し、生態系が維持されています。この豊かな環境は、土壌中の微生物を活性化させ、有機的な土壌環境を育み、ミネラル豊富なコーヒーチェリーを実らせます。
品質を追求したナチュラルプロセス
ロマ・ラ・グロリア農園では主にナチュラルとハニープロセスを採用しています。十分な水インフラが整っていないため、生産処理に使用する水は貯水に頼らざるを得ず、ウォッシュドプロセスの生産量は限られています。そのような条件下でも、独自のロット開発や発酵工程の検証を毎年行い、品質向上を目指してきました。
特に重視しているのは、各国のパートナーから寄せられるフィードバックです。消費国ごとの嗜好に応じて品質を調整し続ける姿勢が、農園の大きな特徴です。ナチュラルプロセスにおいては、アロマやフレーバーの質、透明感、発酵度合いなど、積み重ねたノウハウを活かした特別なロットを生み出しています。
世界から愛されるコーヒーを目指して
「私たちが愛を注いで育てたコーヒーが、世界中で愛されるコーヒーになりますように」。ロマ・ラ・グロリア農園は、いつもポジティブな姿勢で、人々に幸福をもたらすコーヒー生産を続けています。