サンセバスチャンの恵まれた自然環境
ホンジュラス中部、コマヤグア県南部とラパス県の県境に位置するサンセバスチャン地区。標高1,500〜1,700mに広がるこの地は、北東の谷からカリブ海系の暖気が流れ込み、山からの冷気と交わることで、独特の微気候が形成されています。比較的雨量も多く、昼夜の寒暖差が非常に大きくなるこの地は、夜間には15℃程度まで冷え込むため、標高以上にコーヒー栽培に適した条件が整っています。
肥沃な土壌もこの地域の魅力の一つ。砂質の石灰質土壌と粘土質の土壌がバランスよく混ざり合うことで、根張りが良く、保水性と排水性の両立が可能です。このような環境で育まれるコーヒーは、チェリーがじっくりと時間をかけて均一に熟すため、風味豊かで質の高い豆に仕上がります。
品質へのこだわりと、代々続く努力
エル・ロブラル農園は、父の代から受け継がれてきた歴史ある農園で、すでに50年以上の歴史を誇ります。2010年頃からスペシャルティコーヒーの生産に取り組み始め、2013年には初めてCup of Excellence(COE)での受賞を果たしました。それ以降も安定してCOE入賞を続けています。
当初1ヘクタールだった農園は、スペシャルティコーヒーの収益を活かして毎年少しずつ拡張され、現在では10ヘクタールにまで成長。COEで得た賞金も、積極的に設備投資に充て、衛生面を強化したコンクリート発酵槽や、泥の混ざらないきれいな水を使うための貯水槽などが整備されました。
ハニープロセスには専用のビニールハウス型アフリカンベッドを使用し、ミューシレージを残したまま丁寧に攪拌しながら約15日間かけて乾燥。これにより水分活性値をコントロールし、長期的な品質維持を実現しています。さらに、既製の肥料に加え、鶏糞・牛糞・パルプを混ぜた自家製肥料も投入し、土壌の健全性と収量の安定にも注力しています。
日本との出会い、そして新たな挑戦
ロサ・ディマス氏と日本との縁は、彼が初めてCOEを受賞した2013年の翌年、日本から初めてのバイヤーが農園を訪問したことから始まりました。それ以来、毎年日本にコーヒーを届け続け、その品質向上と誠実な姿勢に多くの信頼が寄せられています。
2019年には再びCOE入賞を果たし、IHCAFEの代表として来日。スペシャルティコーヒーの展示会「SCAJ」では、自分のコーヒーが日本で評価され、多くの来場者と交流する中で、日本との絆をさらに深めました。
その翌年、彼は日本市場により素晴らしいコーヒーを届けたいという思いから、新たに標高1,750mの農地を取得。「エル・グアカモーレ農園」と名付けられたこの地で、新たな挑戦が始まりました。農園名の由来は、日本での思い出にまつわるユニークなエピソードから。訪日時に食べた抹茶アイスを「ワカモレ」と勘違いしたというエピソードが笑い話となり、それが日本への親しみの証として農園の名前に込められたのです。
2023年には、日本大使が農園を視察し、NHKの人気番組「世界のランチ」でも紹介されるなど、ますます注目を集める存在となっています。
日本と深くつながる生産者から届く一杯
日本との強い絆を持ち、情熱と努力を惜しまずコーヒーを生み出すロサ・ディマス氏。エル・グアカモーレ農園を立ち上げてから4年、今まさに最高品質の一杯が、彼の手によって私たちのもとへ届けられています。