ンゴロンゴロ/カラツ・コーヒー・エステート
カラツ・コーヒー・エステートは、タンザニア北部・アルーシャから約150km、ンゴロンゴロ・カルデラの外縁に位置する大規模なコーヒー農園です。
この地域に広がるンゴロンゴロ・カルデラは、世界最大級の「陥没していない完全なカルデラ」として知られています。直径約20km、深さ600m、面積約300平方キロメートルにもおよぶその地形は、火山の噴火と崩壊によって形成された壮大な自然遺産です。
カラツ・エステートは、このカルデラの外縁部、標高1,700〜1,820mの高地にあり、豊かな火山性土壌に恵まれています。また、近隣には貴重な野生動物の保護区があり、自然環境と共存した農業が行われています。
カラツ・エステートについて
1950年に設立されたカラツ・エステートは、総面積約300ヘクタールを有する大規模農園で、年間2,500〜4,000袋のコーヒーを生産する「エステート系農園」の代表格です。
収穫期には約250〜400名の季節労働者を雇用しており、地域経済と密接に連携した形でコーヒー生産を行っています。
収穫後のチェリーは、果肉除去後に発酵槽で一晩発酵させ、ミューシレージ(粘液質)を分解。水路で洗い流した後、再度タンクに漬けて“ソーキング”を行い、乾燥テーブルへと運ばれます。乾燥には1〜2週間ほどを要し、その間、各テーブルではピッカーたちが丁寧に選別作業を行いながら、品質向上に努めています。
タンザニア・コーヒーの歴史と特徴
タンザニアにおけるコーヒー栽培の歴史は16世紀、北西部に住むハヤ族によって始まったとされています。その後、ドイツ・イギリスによる植民地時代を経て、近代的な産業として発展しました。
北部のアルーシャ、モシ、ンゴロンゴロといった地域は、現在でも主要な生産地であり、特にモシを拠点に1950年代以降、多くの200ヘクタール超のエステート農園が誕生しました。
「キリマンジャロ」の名で知られるこれらのコーヒーは、日本市場でも広く親しまれており、日本は現在もタンザニアコーヒー最大の輸出先の一つです。
タンザニアのコーヒーは、ケニアと同様に、モシのオークションセンターで売買されるのが一般的です。また、すべての土地が国家所有であるという特徴があり、農園主は規模に関わらず国から土地を借りて栽培を行っています。大規模なエステート農園では、近代的な設備を用いた効率的かつ高品質なコーヒー生産が行われています。
現在では、ブコバ、キゴマ、ンベア、ンゴジといった西部・南部の地域にも生産が広がっており、生産技術の向上や多様性の拡大により、タンザニアは改めて注目される生産国となっています。