近年、コーヒーの風味や品質に対する探求から、ウォッシュド・ナチュラルという伝統的な生産処理プロセスに加えて、アナエロビックやカーボニック・マセレイションなどの発酵工程による風味の変化も模索されています。ウォッシュド・プロセスにおいても、水の品質向上に焦点を当て、ろ過や水路の衛生強化などを通じて、より高品質で清潔な水を使用することで、コーヒーの品質向上が図られています。
さらに、乾燥工程においても、ベッド番号でのロット管理や伝統的なアフリカンベッドの天日干し乾燥に加えて、農業用の遮光ネットをシェードに使用した日陰干し方法も検証され、採用されています。通常のアフリカンベッドでの乾燥に要する10日から14日の時間が、シェードによる日陰乾燥では1週間ほど延長され、乾燥時間は約20日になります。この乾燥時間の変化は、水分値だけでなく、水分活性値の適正化に貢献し、品質の安定化に大きく寄与しています。
イルガチェフェコーヒーは、南部諸民族州ゲデオZoneと隣接するオロミア州ゲレナアバヤworeda(郡・町)のコーヒーから成り立っています。ゲデオZoneには、中心地であるディラを含むウェナゴ、イルガチェフェ、コチェレ、ゲデブなどの町が、主要な生産エリアとして位置しています。標高は1700~2440mに及びます。
この地域には、主にゲデオ族が居住しており、その割合は8割強ですが、オロモ族やアムハラ族なども暮らしています。ウォッシングステーションは1970年代にイルガチェフェエリアに導入されたとされ、古い歴史を持ち、エチオピアでも代表的なウォッシュドコーヒーの産地として知られています。この地域は山岳地域であり、豊富な水資源があります。これらの水資源は、この地域のコーヒーの品質を支える重要な要素です。
ここに住む小規模なコーヒー生産者の多くは、アカシアやアフリカンコーディアなどのシェードツリーの下で、コーヒーと共にエンセーテ(ニセバナナとも呼ばれる、バナナの木に似た植物で、デンプンとして食用に栽培される)をプランテーションしています。